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尺八で「ドレミファソラシド」を吹く前に確認しておきたいこと

1. 手元にある尺八の長さは?

 尺八の長さにはさまざまなものがあります。1尺8寸=約54cmが標準管です。1.8尺という長さは「しゃくはち」という名称のもとにもなりました。ほかに1尺6寸、2尺、2尺3寸など、調律された管には1寸=約3.03cm刻みでさまざまな長さものがあります。長さが短い管をつかえば高いほうの音域、長い管は低いほうの音域をカバーできます。なお尺八の中には調律していない(長さを調整していない)管もありますがここでは取りあげません。

長さの違う尺はシとキイの関係を示した図

図1: いろいろな長さの尺八とその筒音(楽器の穴を全部塞いで出る最低音)のキイ

2. 手元にある尺八の指孔(ゆびあな)の数は?
 標準的な尺八では、表に4つ裏に1つ、合計5つの孔があります。他にも7孔(こう) 尺八などがあります。ここでは標準的な5孔尺八を前提に話を進めます。表の孔は下から順番に1孔、2孔、3孔、4孔、裏が5孔です。5つの孔全部を塞いで出るその楽器の最低音を「筒音:つつね」と言います。筒音の音程で長さの違う尺八を区別してD管とかA管などと呼ぶ場合もあります。

五孔尺八の指穴番号を示した図

図2: 指孔の番号(五孔尺八)

3. 基本5音について:ロツレチリ/ハ

 五つの孔を単純に開閉して得られる音を基本5音と言います。指使いを変えずに息の流れを速めると同じ音程の1オクターヴ上が出ます。

 

楽器の長さ(キイ)に関係なく「ロ」から「リ/ハ」の音域を「乙(おつ)」、同じ音域の1オクターヴ上を「甲(かん)」と言います

 

音名(指使い)は「乙」の場合、低い方から順にロツレチリ(琴古流)またはロツレチハ(都山流)です。楽器の長さ(キイ)に関係なく、ドレミファソラシドで言うと四番目の「ファ」と七番目の「シ」を抜いたドレミソラを下からラドレミソの順に並んべたものが尺八の基本5音階:ロツレチリ/ハです。

尺八の基本5音階の音程と指使いを示した図

図3: 尺八の基本5音(1.8管5孔尺八の場合)

この図ではドレミファソラシドは移動ド(相対的な音階)を表します。

尺八の二大流派、琴古(きんこ)流と都山(とざん)流とでは同じ指使いに対する呼び方が違う場合がありますが、その場合も音程は同じです。

4. メリ音について
 下唇から顎にかけての部分で塞がれたマウスピースの開口面積を狭くして、指使いを変えずに音程を下げる技法を「メリ」または「メル」と言います。メリ音の演奏は、顔を前方に倒す(あるいは楽器の先端が手前に持ち上げる)ように見えますが、これはあくまでも「下唇から顎にかけての部分で塞がれたマウスピースの開口面積を狭く」した結果です。これとは逆に「マウスピースの開口面積を広くして音程を上げる」技法を「カリ」またその動作を「カル」と言います。詳しくは「THE SHAKUHACHI for BEGINNERS narrated in six languages /尺八フォービギナーズ 六カ国語ナレーション(琴古流) [DVD] などを参照してください

尺八特有の奏法「メリ」を説明した図
尺八特有の奏法「カリ」を説明した図

図4: 「メリ」の動作

5.基本5音と7つのメリ音について

  尺八の場合、基本5音以外の音は、指で孔の閉じ具合を調節したり、下唇から顎にかけての部位で塞いでいる歌口の開口面積を調整(楽器を寝かせる/立てるといった表現を使うこともあります)したりすることで音程を変化させて作ります。これがいわゆるメリやカリと呼ばれるテクニックです。

とくにメリ音(基準となる音程を下げた音)は、平均律(1オクターブを12等分した音律)を構成する12音を尺八で奏する場合の考え方として重要です。なぜなら、尺八の場合、12音の内、基本5音以外の7つの音は原則的に「メリ音」として位置づけられているからです。


伝統的な古典曲では、一口にメリ音と言ってもさまざまな音程があってそれらを平均律の音程に単純に還元はできませんが、ここでは平均律を前提として、半音メリ(音程を半音下げる)と一音メリ(音程を半音+半音=全音分下げる)ついて確認しておきます。

以下は1.8_5孔(D管)の基本5音と7つのメリ音の関係を表した図です。

「メリ」音と基本5音階の関係を示した図

図5: 基本5音と7つのメリ音の関係

 基本5音+メリ音7つで平均律を構成する12音が揃います。実際に使われるメリ音の音名=運指の詳細については各調の「ドレミファソラシド」を扱う際に説明しますのでそちらを参照してください。基本5音のうち「ツ」「リ/ハ」二段階のメリ:半音メリと一音メリ♭♭)があります。「ロ」「レ」「チ」については古典曲などを吹く場合以外は半音メリ)が基本です。

 

詳しいことは省きますが、1.8(D管)の最低音は、理論上、筒音である「乙のロ」つまり D です。しかし指使いはそのままで(5つの孔を全部閉じる)、歌口の開口面積を狭くする(メル)と D♭「ロのメリ(琴古流)/ロの半音(都山流)」 が出ます。

6.音程と音質に注意しましょう
 たとえばピアノは平均律を構成する12の音(音程)を簡単にしかもほとんど同じ音量、音質で奏でることができます。それに対して尺八は、隣り合う5つの孔を単純に塞いだり開けたりして出る音(音程)は基本的に5個しかありません。それ以外の音は原則的にメリ音(あるいはカリ音)となりますが、これは奏者が指穴や歌口の開口面積を調節して鳴らすため、音質や音程を安定させるのが難しい面があります。また基本5音であっても、歌口の開口面積の調節具合(メリ/カリの度合い)によって音程はかなり変化します。尺八を吹く場合は、尺八がもっているこうした特性を意識しながら、
たとえ指使いが正しい場合でも、自分の耳で音を確かめながら正しい音程で演奏することが大事です。

 

さあそれでは、まずはハ長調の「ドレミファソラシド」を吹いてみましょう!

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