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♯または♭のついた楽譜に慣れましょう!
​12音階と五度圏(サークル・オブ・フィフス)について

1. ♯または♭にはどんな意味があるのか?

五線譜にはただメロディーを知るだけでなく、曲の構成やコード進行を知る上でも重要な役割があります。五線譜に登場する♯♭の意味を確認しておきましょう。大きく分けて以下のような二つの意味があります。

A]

曲の調(key)を示すために用いられます。この場合♯/♭は五線譜の左端にある音部記号(ト音記号やヘ音記号など)の右側に書きます。ハ長調=C major は♯も♭も付かない調です。それ以外の調=keyには必ず1つ以上の調音記号♯もしくは♭が付きます。

B]

曲の調(key)を示すのとは別に、音符の左側に書いてその音を一時的に「半音上げる:♯」または「下げる:♭」という指示与えます。もし全音(一音)の上げ下げを指示したい時には♯または♭を2個並べて書きます(例外あり)。

尺八の譜面にもメリ(音を下げる)カリ(音を上げる)の名が付いた譜があります。音の上げ下げを指示するという点では♯/♭と似ていますが、尺八譜はあくまでも指使いを指示した奏法譜(タブラチュア譜)です。尺八譜の「メリ」や「カリ」には 調号としての機能はありません。

2. 半音階:クロマティックスケール

半音階は、1オクターブを12の音程で等分した音階です。1オクターブ内の12音のどれから始めても音階構造は同じ(隣り合う音の音程差はすべて半音)で、たいていの場合、音階が上に向かうときはシャープ系、下に向かうときはフラット系で表されます。以下に、Cから始まる半音階と、1.8尺八(D管)の基本5音の音程関係を示します。

半音階の説明図

図1:Cから始まる半音階と一尺八寸管(D)の基本5音の位置関係

以下はDから始まるクロマティックスケール(上向)と1.8管5孔尺八の運指表です。

1.8管5孔尺八で演奏する半音階の運指表

図2: Dから始まる半音階と1.8管5孔尺八の運指

3. メジャースケール(長音階)

1オクターブを構成する12音のうち7音をつかい、隣り合う音の音程差を全音、全音、半音、全音、全音、全音、半音で並べた音階をメジャースケール(長音階)と言います。全音、全音、半音、全音、全音、全音、半音の音程関係は、調(キイ)が変わっても(つまり、半音階を構成する12音のどこから7音構成のメジャースケールを始めても)変わりません。なおスケールを構成する7つの音が基音(=トニック:その音階のはじまりの音)から数えて何番目になるのかはよくローマ数字で表記されます(ローマ数字を使わない場合もあります)。

長音階の音程を解説した図

図3:ハ長音階 Cメジャースケールの音程構造

4. 12の調(キイ)とシャープ/フラットの関係は?

半音階を構成する12音のどこから始めてもメジャースケールが成り立つ言うことは、メジャースケールには12種類あると言うことです。その中で Cメジャースケール(ハ長音階)には唯一調号の♯/♭がつきません。その他の調(キイ)には調音記号としての♯/♭が必ずひとつ以上つきます。なお日本では、調を記す場合に「ABC」ではなく「イロハニホヘト」を使う習慣があります。「イロハ」にフラットをつけた場合は「変」シャープをつけた場合は「嬰」という語を付け足します:変ロ=B♭、嬰ハ=C♯。「ABC」「イロハ」「ドレミ」「I II III 」などさまざまな表記があってわかりにくい部分がありますが、ここでは、調(キイ)を表す場合は「イロハ」、相対的な音程関係を表す場合は「ドレミ」(いわゆる移動ド)またはローマ数字の「I II III 」を使うと言うことで話を進めます。

いま、この Cメジャースケールの4番目の音(IV)を基音として「ドレミ...」を始めたとしましょう。新たな調(キイ)の「ドレミ...」は:ド (F)、レ(G)、ミ(A)、ファ(B♭)、ソ(C)、ラ(D)、シ(E) となります。これが Fメジャースケール(ヘ長音階)ですが、メジャースケール(長音階)の音程構造である全ー全ー半ー全ー全ー全ー半という7音間の音程差を保つため第4音(IV=B♭)に調号<♭>が現れます。

これと同じように、今度は Fメジャースケールの第4音から「ドレミ...」と始めると、新しいメジャースケールは、ド(B♭)、レ(C)、ミ(D)、ファ(E♭)、ソ(F)、ラ(G)、シ(A)となり、やはり第4音(IV=E♭)に調号のフラットが現れます。基音がB♭なので新たに出てきたE♭と併せてB♭メジャースケールの調号はフラット二つになります。

 

この作業を繰り返してゆくと、新しいメジャースケールが作られるたびに、ベースとなるメジャー・スケールの第4音(IV)に♭が一つずつ追加され、12回目にはCメジャースケール(ハ長音階)戻ります。

調によって♭記号が増えて行く順番を解説した図

図4:調号♭の増え方とキーの関係

しかし、このルールに従って、♭記号だけを使って12調すべてで「ドレミ...」を示そうとすると、1つの音に対して♭を2つ書かなければならなくなります(例えばBを C♭♭と書く)。これは五線譜に書く調号としては実用的ではありません。実際には、12ある調(キイ)のうちの半分は<♭>で、残りの半分は<♯>で表わすのが一般的です(一部例外あり)。

 

<♯>で表わす場合ですが、具体的には上記<♭>のときとは逆に新たなメジャースケールの基音を上5度=下4度に定めます。Cメジャースケール(ハ長調)の5番目(V)の音はGなのでこの音を基音に「ドレミ...」を始めます。それがGメジャースケール(ト長音階)です。音程はド(G) レ(A) ミ(B) ファ(C) ソ(D) ラ(E) シ(F♯)となり、調号の<♯>が7番目(VII)に1つ現れます。これと同じ手順をくり返すたびに新しいメジャースケールの7番目(VII)にシャープが一つずつ増えて行き、12回目でハ長調に戻りますが、前述したように6回目でフラット表示に切り替えます(例外あり)。

調によって♯記号が増えて行く順番を解説した図

図5:調号♯の増え方とキーの関係

5. 五度圏:サークル・オブ・フィフス

上記の仕組みを図にしたものを「五度圏:サークル・オブ・フィフス」と言います。

5度圏の図

図6:五度圏 

調音記号がどんな順番で増えていくかを理解するには便利な表です。なお円の内側は長音階「ドレミファソラシド」を「ラ」から始めた短音階「ラドレミファソラ」の調を表しています。この関係は平行調と呼ばれますす。例えばへ長調=F major の平行調はニ短調=D minorです。

12のキイすべてのメジャースケールを吹けるようにしておくことは、特にクラシック、ジャズ、ポップスの尺八演奏には欠かせない練習です。1.8管5孔尺八でサークル・オブ・フィフスのメジャースケールを時計と反対回りに吹いて見ましょう。

 

C→ F→ B♭→ E♭→ A♭→ D♭→ G♭=F♯

 

調号のフラットが増えて行くのに比例してメジャースケールに使える基本5音の数が減っていきます。逆に言うとメリ音の数が増えて行きます。

尺八基本5音階と♭系キイの関係を解説した図

図7:五度圏を反時計回りに吹くときに使うことができる1.8(D)尺八の基本5音(赤字で示す)

CメジャーとB♭メジャーについては1オクターブ上から始める。四角で囲んだ音は1.8(D)尺八の音域外にある音です。丸で囲んだDが筒音。D♭メジャーの最初の音は筒音(D)をメル。1オクターブ上の D♭は図2に示した運指表の C♯/D♭:五のヒの中メリ/ヒの半音で吹く。

G♭=F♯まで行ったら今度は時計回りでもメジャースケールを吹いて見ましょう。

CGDAEBF♯=G♭

反時計回りの時と同じように調号のシャープが増えて行くとメジャースケールに使える基本5音の数が減っていきます。逆に言うとメリ音の数が増えて行きます

尺八基本5音階と♯系キイの関係を解説した図

図8:五度圏を時計回りに吹くときに使うことができる1.8(D)尺八の基本5音(赤字で示す)

Bメジャーは1オクターブ上から始める。

長さ(キイ)の違う尺八を使って曲を移調する例

サークル・オブ・フィフスを反時計回りでプレイしてみるとわかるとおり、
C, F, B♭メジャースケールでは基本5音 DFGACがすべて使えます。
E♭メジャースケールになると基本5音のうち A が使えなくなります。
A♭メジャースケールでは ADが使えません。
D♭メジャースケールでは
 ADCが使えません。
G♭メジャースケールでは 
ADCGえません。

一方時計回りの場合、
Gメジャースケールでは基本5音:DFGACをすべて使えます。
Dメジャースケールでは C
Fが使えなくなります。
Aメジャースケール
では CFGが使えなくなります。
Eメジャースケール
では CFGDが使えなくなります。
Bメジャースケール
では CFGDA (基本5音すべて)が使えなくなります。
F♯ メジャースケールではF (=E-sharp)を使えますが
 CGDAが使えません。

メジャースケールを吹くときに使える基本5音が減ると言うことは、スケールを構成する音にメリ音が増えると言うことです。しかしメリ音は基本5音に比べると音程や音量のコントロールが難しくなります。

普段から1.8(D)尺八で12のキイすべてのメジャースケールを吹けるようにしておくことは大切でが、使用できる基本5音が少ない調(キイ)で作曲された曲を実際に演奏するとなるとメリ音が多くなり、おそらく表現力が制約されてしまうでしょう。そういう場合は自分が使う楽器自体のキイ(長さ)を変えることで対処できます。

たとえばA♭の曲(使える基本5音は3つ)を演奏する場合ですが、1.8(D)よりもキイが2度低い2.0(C)尺八を使えば、それをB♭のキイ(基本5音すべてが使える)で演奏できます。

以下はスタンダードナンバー You don't know what love is の最初の4小節です。原曲のキイ(Original key)はA♭で、もしこれを1.8(D)尺八でプレイする場合、使える基本5音はFGCの3音です(DとAが使えません)。また出だしのCは1.8(D)尺八の音域外です。

このA♭の曲を2.0(C)尺八で吹く時は原曲のキー(A♭)を2度上のB♭に移調します。移調したキイ(Transposed key)を2.0(C)で演奏すれば、これを1.8(D)尺八でプレイするの同じ結果になります。2.0(C)尺八は1.8(D)の2度下だからです。

移調した楽譜の例

参考までに、2.0(C)尺八の基本5音の音程を図1の1.8(D)のそれと比べて見てください。

2.0管5孔尺八で演奏する半音階の音程表

図9:2.0(C)尺八の基本5音

これはほんの1例ですが、1.8(D)尺八でプレイするのが難しいときには、1.8(D)以外の楽器のキイに合うように原曲を移調することで多くの問題が解決されるはずです。

尺八でクラシックやジャズ、ポップスを演奏する場合には、半音階を構成する12音を正しい音程でプレイできるようにしておくことはもちろんですが、演奏したい曲とそれに使う楽器のキイ(長さ)を理解しておくことも大事です。

五線譜にシャープやフラットが出てきても臆せず演奏ができるようになればあなたのレパートリーは飛躍的に拡張するはずです。慣れるまでは少し時間がかかりますが、原理を理解すれば難しいことはありません。ぜひ日本の古典だけでなくさまざまな音楽を尺八で楽しんでください!

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